ギャラリーインタビュー4

 

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~美の起原との邂逅・アーティスト達の軌跡~

【焼き絵職人 Rocky】前田 克(まえだすぐる)
東京都杉並区出身(元プロボクサー)

私は電熱ペンで『木』の表面を焼く技法で絵を描いています。
木が熱で焼かれた時の『焦げ茶色』のみを使って描いています。
着色とは異なり、『木』の中に内在する『色』を引き出すので、自然かつ温もりのある色彩を活かすことができます。
そしてその『Yaki-E』という技法で人物画を描くことで、人の心から温もりを引き出します。


【焼き絵飾人 Pocky】前田 春江(まえだはるえ)
東京都八王子市出身(だるまん作家・POPクリエイター)

小さい頃から絵を描くことが大好きで、文字も「絵」として捉え、独自の文字でPOPを作成しています。
また、一枚のイラストから生まれたオリジナルキャラの「だるまん」で人々の「笑顔」が引き出せたらと願い、
一つ一つ手作りしています。
昨年より主人の影響により「木」の魅力に目覚め、「焼き絵」を始めました。

LINEスタンプ : https://store.line.me/stickershop/product/1011655/ja


お二人のホームページができました! こちらもご覧くださいませ。
「オリジナルギフトの壱点堂」https://www.ittendo.com/

 

■インタビュー 2017.03.03~03.05:夫婦展にて取材

――こんにちは 本日は、宜しくお願い致します。

今までは、当画廊で初めて個展を開いて頂いた方にインタビューをさせて頂いていたのですが、満を持して当画廊最多(個展2回、美の起原展2回、夫婦展)のご利用を頂いており、ご主人(前田克様、以下Rockyさん)が、「第一回美の起原展」金賞(現大賞)受賞者でもある前田ご夫妻を今回はお迎えしました。

――Rocky さんへ伺います。

金賞を受賞されて、変わった事はございますか? もちろん、一番は当画廊での受賞記念の個展が、奥様(前田春江様、以下Pocky さん)との出逢いの場となった事だとは思いますが(笑)

Rocky さん:結果的にそうですね(笑)それが切っ掛けとなって、今回の「夫婦展」が出来きた というのはありますね。初めて自分の描いた絵に評価を頂けたのが「美の起原展」だったのです。ひとつ違う角度から やりがいを感じたのは覚えています。

――Pocky さんは如何ですか?

Pocky さん:まさか3年前に、こちらの画廊に観に来た個展で出逢った人と、結婚するとは思ってもいなかったので不思議な事だと思いました。

――お二人とも、昨年11月にご結婚されて、作風や新たなキャラクター等、作品の幅が広がっているように感じますが、ご本人としてはいかがでしょうか?

Rocky さん:妻には、私の作品を違う角度から見てもらい、アドバイスをしてもらえるので、作品が立体的に膨らんだ感はありますね。

Pocky さん:私も同様です。イラストなどに関しても「こうしたら動きが出るよ」などのアドバイスをしてくれたり、自分だけでは思いつかないような事を言ってくれます。お互いにプロデュースし合っているというか・・・自分では気付かなかった部分をお互いが見つけ合い、新しい作品が生まれる可能性を感じられるようになりました。

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――今回は、昨年11月に開催されたRockyさんの個展に続き、3日間という短期間で、かつご夫婦でのコラボ企画となっていますが、どのような想いが詰まった開催だったのでしょうか?
また、特に思い入れやこだわりのある作品はございますか?

Rocky さん:前回の個展は、妻が色々とサポートをしてくれましたが、あくまでも自分一人の作品の発表の場でありました。しかし今回の展示は、パートナー(伴侶)と共に制作し、そしてその作品をたくさんの方々(友達・両親)に観て頂けました。そういった意味では、妻と共に感謝の気持ちを発表する場と時間が作れたのではないかと思いました。
今回、3日間という短い開催期間を設けたのには理由があります。実は以前から私のアメリカの友人から「どうしても焼き絵を観たい」との要望がありました。奇しくも来日する予定があったので、そのスケジュールに合わせて展示会を開催する事にしました。しかも「夫婦展」という形を持って、友人を迎えようと思った訳です。長期間でも良かったのですが、「3日間という期間に力を傾注して、熱い思いを伝えよう」と、妻と話し合いました。
また、今回の展示で思い入れのあった作品は「俺の父ちゃん、母ちゃん」です。私を生んで育ててくれ、創作活動を応援してくれる両親に感謝の意を込め、サプライズで二人の肖像画を描かせて頂きました。

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――Pocky  さんの思い入れのある作品は?

Pocky さん:「だるまん」の人形は全てなんですけど、一年前から始めた「焼き絵」を観て頂きたかったというのと、掛け軸職人のお友達とコラボで作った作品に思い入れがあります。

――Rocky さんは、当画廊での最多展示作家様なのですが、率直に当画廊の感想をお聞かせ下さい。また、なぜか画廊のご近所の方々とも仲良しですよね?(笑)

Rocky さん切っ掛けは「第一回美の起原展」に応募させて頂いた事でご縁を頂いたという事ですけれども、何と言ってもスタッフの皆さんの気配りと、このギャラリーの空間というか・・・説明しにくいんですが・・・しっくりくる「相性」の合う「最高のパートナー」という感じで使わせて頂いております。
この画廊に来るもう一つの楽しみが、近所の方々に会える事です。銀座というと、敷居の高い土地ってイメージがあるんですが、ここでは真逆で、凄く「義理人情」の厚い方々に出逢う事ができました。来る度に、親交を深めさせて頂き、「いつでも来たい!」って思いがありますね。町全体が家族みたいで「今度いつ来るの?」って近所の方が覗きに来られたり、通りがかりに声を掛けて下さったりと・・・普段の生活ではあり得ない体験です。今回は夫婦になってから、そういう方々に「おめでとう」と言ってもらえた事が本当に嬉しかったです。

――焼き絵を始められた切っ掛けは、温熱療法師をされていた際に、がん患者さんに喜んでもらおうと言うことで始められたとお聞きしていますが。

Rocky さん:当時、民間療法である「温熱療法」というの東洋医学を学び「温熱療法師」としてがん患者さんのケアをしておりました。毎日毎日、自分で考え工夫しては、何とか患者さんのメンタル面もケアしたいと思っておりました。何か良い激励の仕方がないかなと思った挙句に、自分が出来る事は「画を描いてプレゼントし、内奥から喜びを引き出す!」事にたどり着きました。当初は墨絵を描きプレゼントしておりましたが、奇しくもある時「焼き絵」に出会いました。「焼き絵」とは木の板の表面を電熱ペンで焦がし描く技法です。しかも「廃材」という、いわば見捨てられた物に、もう一度「命」を吹き込み「蘇生」させるというテーマを築き、作品を生み出しては患者さんにプレゼントしました。見捨てられ、廃材となっていた木でも、そこに絵を描くことで人の心から「感動」を引き出す可能性が生まれるんだというメッセージを込め、一生懸命激励しました。やがてそうすることで治療が効果的になるという事が解ってきました。そして自分なりにカルテにデータを残し研究をし、何年も施術しておりました。ある ひとつのドラマがありました。私が担当していた患者さんで、車イスで通院していた方がいらっしゃいました。その方が自分の脚で立ち、歩き、私の個展に来てくれたのでした。この時はっきりと、自分が画を描く使命は、これにあるんだなと思いました。「人の心」にアプローチする作品を作りたいという想いで制作し、今現在の私があります。

――ウッドバーニングではなく「焼き絵」・作家ではなく「職人」と言われていますが、どのような思いからでしょうか?

Rocky さん:ウッドバーニングというとカッコイイと思うんですが、自分は日本人であり、日本の言葉が好きなので、あえて「焼き絵」というフレーズを使用しております。非常にノスタルジックな音を感じるし、今後世界に発信する際に「焼き絵」「Yaki-E」を力強くアピールする為にというのもありますね。
「職人」と名乗っているのは、私は自分の想像で
モチーフを描く技術がなく、写真を見ながら、それをアレンジすることしか出来ないからです。以前は「作家」と名乗っていた期間がありましたが、ある「作家」さんから「オリジナルも描けないのに、作家と名乗らないで欲しい!」と叱責されたのが考え直した切っ掛けです。確かに写真を見て自分なりにアレンジはしてますが、オリジナルではないので「作家」とは言えません。したがって あえて「職人」と名乗っております。

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――Pocky さんは、POPクリエイターから、今ではオリジナルキャラクターの「だるまん」で数々の作品を生み出されていますが、「だるまん」誕生の切っ掛けは何だったんでしょうか。

Pocky さん:POPの仕事をしている合間のいたずら書きをFacebookにUPしたのが始まりで、そのイラストが友達の間で、話題になりまして「可愛い!」と人気になったんです。
それで、面白半分に「この子の名前を募集します!」とFacebookで告知したところ、色々な名前をFB友達がいくつも挙げてくれて、その中で「だるまん」という名前が一番心に響いたので「だるまん」という名前に決まりました。その後も、投稿のコメントで「色がついただるまんが見たい!」「立体のだるまんが見たい!」という声を、一人ではなく色々な方からいただいて、そのリクエストに応じていくうちに「だるまん」というキャラクターが育っていきました。なので、自分だけで作った感じではなくて、繋がってくれているお友達のおかげで誕生したのが「だるまん」です。

――「だるまん」は、LINEスタンプも販売されていますが(私も愛用しております)今後、焼き絵バージョンとか、動くタイプのスタンプなど販売のご予定はないのでしょうか(この時点では、第2弾まで販売中。現在、第3弾も販売されています)

Pocky さん:おかげさまで、皆様から様々なご要望を頂いているので、これから作っていきたいと思っております。色々と描き溜めてはいるんですけれども、なかなか処理まで時間が掛かっています。けれど必ず販売は続けていきますので、今後とも応援のほど宜しくお願い致します(笑)

――現在のお二人のアーティストとしての活動、また今後の夢やコラボのご予定がありましたら教えて下さい。

Rocky さん:自分が個人でやっている時は、ミュージアムを作りたい(焼き絵ミュージアム)というのが夢だったんですが、伴侶に出逢った事によって「二人のミュージアム」を作りたいなというのが現在の夢です。今回、「夫婦展」をやった事により、不思議な未来予想図みたいなものが手に入れる事が出来たかなという手ごたえがありました。残りの人生は、ミュージアム設立を目指し、生きて生きて、生きまくりたいと思っています!

Pocky さん:同じくなんですが今回ここで展示させて頂いたような空間で、お互いの作品を展示も出来ながら販売や制作も出来るようなスペースを二人で持ちたいなぁと思います。来てくれた方と対話が出来るような・・・やはり、Web販売とかだと相手のお顔が見えないのが残念です。今回「夫婦展」をやって解った事は、色々な方々の反応を実際に見て聞いて感じる事が大事だということでした。自分達が思っていなかった様な反応があり、次の作品への一つのヒントになりましたので、そういう事を続けると、またどんどん進化していけるかと思いました。こういう場所(人が入って来てみてくれる)を二人で作っていけたらなぁというのが夢ですね。

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――Rocky さんは、その風貌から悪役専門の俳優業もされていらっしゃいますがテレビ出演のご予定があれば、ぜひ宣伝して下さい。でも、ご結婚されてから目が優しくなってしまったのでそちらの方は、廃業の危機かな?という感じもしますね(笑)

Rocky さん:それは、危機ですね(笑)
事務所の方からオファーはあるんですが、スケジュールが合わなくて断っている感じです。今後時間があれば、そちらの方にも出演したいと思っています。
そこそこ緊張感を持って、昔の杵柄を無くさないようにしたいなと思っているんですけども、たまに怒られるのでその時に蘇りますね(笑)

――Facebookのプロフィール写真を見てこられた方は、実際お優しいのでギャップにビックリされる方が多かったですね(笑)
今回は、通りすがりの方も怖がらずに入って来てくれましたしそれだけ顔が優しくなったのかも!(笑)

Rocky さん:だるまんの看板が効いたのかも知れませんね(笑)入りやすいのと、遠くからでもわかりやすかった。
昨日のお客様の中には「安岡力也のような声をしているんじゃないか」というイメージで来たら「全然きれいな声!」って言われました(笑)ギャップもセールスポイントにしたいと思います(笑)

――最後に何かございましたら、お願いします。

Rocky さん:凄く収穫が多かったです。あっという間に時間が過ぎた・・・朝来られた人が遠い昔のように感じるくらい(笑)
また、不思議とお客様が重ならずに、丁寧に対応が出来他のが嬉しかったです。タイミングが凄く良くて不思議ですね・・・。
僕たち・私たちの「頭の中の世界」を表現した空間に来てもらった感じです!
また、色々な人がここで、繋がっていくのが嬉しいですね。
テーマが決まっていると、ブレない人たちが集まってくるので、きっと同じような思いの方々が来られるんでしょうね。
今回実感したのは、人って言葉とか声の響きとかで本当に覚醒するんだなと・・・
どんなにオンラインが発展しても、その部分が大事なのかな・・・。人と人との「出逢い・繋がり」妻の描いた言葉「出逢いに感謝」に尽きると思うんです。
それを具現化して、どんどんその希薄化しているコミュニケーションを「ものづくり」でもう一度蘇らせたいなと思いますね。

Pocky さん:今回感じたのは、絵だけではなく文字が入る事によって絵の意味とか、見る人の見方が変わったみたいで、より絵を楽しんでもらえたような気がします。
「文字の力」・・・パソコンの機械的な文字ではなくて、「筆」とか「手描き」の文字の温かさ・良さが色々な人に伝わったのが凄く嬉しかったです。これからもそういう仕事をしていきたいなと強く思いました。
そして今後は、日々の生活・会社とかで疲れている方たちの「心」に響くようなを「言葉」とか「文字」で発信していきたいなって強く思った「夫婦展」でした。

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――前回の個展の際には、恐々外から覗いているだけの方が多かったのですが、今回は搬入の時から興味深く覗いていらっしゃる方が多かったようですし、ふらりと立ち寄られたり、Facebookを見てまったく知らない方が来て下さって、Rockyさんの絵に凄く感激して泣いていた方もいたりして・・・皆さん、ほっこりとして笑顔で帰られるのを見て、「疲れている人がここに癒されに来たんだな・・・」って感じでしたね。
また、当画廊に戻って来て頂くのを期待しております!
ありがとうございました。

※今回の展示(搬入に半日かかりました)を3日間だけにしておくのは、もったいないというお声を多く頂戴した為インタビュー後に、急遽常設展での延長展示となりました。常設展示では、ご夫妻の在廊はありませんでしたが再びグッズを購入しにいらした方もあり、好評のうち終了致しました。